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虚数・複素数は何のためにあるのか

【虚数とは】
 整数、分数、少数、無理数といった実数に対して、「虚数」という数が存在します。高校の数学で学んだ人も多いかと思います。 定義としては、2乗したときに負の数(0を超えない実数)になる数を指します。実数は数直線上の1点で表すことができるのでイメージしやすいですが、虚数には実体がないのでなかなか分かりにくい概念です。実際、英語では imaginary number と言われています。

そもそも虚数という概念が生まれたかというと3次方程式の解の公式を求める際に虚数を利用せざるを得なくなったことに端を発します(具体的には複素数の3乗根を求める計算が必要)。
ちなみに2次方程式の公式は中学の数学で学ぶように、覚えやすいもでのですが、3次方程式の解の公式は非常に複雑で公式といっても覚えられるようなものではありません。

しかしながら、2乗して負になる数という考え方は当時まだ受け入れられず、その後200年以上論争が続きました。しかし、この虚数を用いると、これまで解けなかった因数分解や方程式の解が解けるようになることから、これまでの数の理論が不十分であると徐々に認識はされていくようになりました。

【虚数は虚数単位で表す】
 複素数の話に行く前に、虚数の表現方法について説明します。虚数は i × i = -1 となる記号iを用いて表されます。これを「虚数単位」といい、このiに実数を掛け合わせて、 3 i などとして活用します。この虚数に実数を組み合して 2 + 3 i などとした数が複素数です。

【複素数の利便性】
 虚数がまだ受け入れられない状況が続く中、18世紀の数学・物理学者ガウスは複素数という実数と虚数を組み合わせて1つの数とする複素数という考え方の重要性を説いていきました。

その過程において、この複素数には虚数が含まれているため、数直線上では表現できないことをうまく利用し、ガウスは2つの数直線を直交させた平面(複素平面、またはガウス平面とも呼ばれる)を考えました。これは横軸を実数の軸(実軸)、縦軸を虚数の軸(虚軸)としたもので、この複素平面により複素数は平面上の1点で表すことができるようになりました。

これにより、数学における様々な方程式の解に加え、様々な物理現象をうまく定式化できることも分かったため、次第に受け入れられてきました。
特に、複素数は2つの数を組み合わせて表されるため、電流と電圧、温度分布と熱など、連動して変化する2つの状態を1つの数として表すことができるため、物理や工学の世界で非常に重宝されています。

例えば、複素平面においては−1 をかけると、複素数の実数部と虚数部が共に負になるため、複素平面上では180度の回転に対応することになります。
また、iをかけると、虚数部が i 2 になり、-1になるので複素平面上では反時計回り90度の回転に対応することになります。
このような性質を用いると、位相のある交流回路の計算を簡単に行うことができるようになるのです。