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対数は何に使うのか

【対数の定義】
 高校の数学で習う対数ですが、何につかわれて、どこが便利なのでしょうか。そのあたりを把握するために、まず定義と基本的な演算方法を見ていきます。

 言葉で言えば、「ある数xが一定倍になると、log(x)は一定値だけ値が増加する」、つまり、ある数が基本となる数(x)を何回かけたものかで表すのが対数です。

log a x と表され、特に基本となる数a(これを「底」といいます)が10の場合は常用対数、eのときは自然対数と呼びます。

【基本的な演算】
 対数の便利なところはかけ算を足し算に変えられることろです。例えば100×1000=100000という計算は指数を用いると、 10 2 + 10 3 = 10 5 、常用対数で考えると、2+3=5となります。

【用途例1(常用対数)】
 化学反応や生物の反応では、物質の濃度よりその対数で大きさを評価する方が良いものがあります。例えばpH(ペーハー)です。溶液の酸度(酸っぱさ)は水素イオン(H+)濃度で定まりますが、その大きさの評価には水素イオン濃度の常用対数にマイナスをつけたもの pH = - log 10 x (水素イオン指数)がよい指標になります。これをpHという記号で表すのが世界的標準です。

 また、死亡率が時代や年齢と共にどのように変わるかを表示するときは、常用対数を取ると図が見やすくなります。死亡率は年を取るほど上昇します。当たり前ですが、20代よりも80代の方が死亡率は高くなるわけです。横軸に年齢縦軸に死亡率をとったグラフを作ってみると、年齢が増加するにつれて死亡率の上昇カーブが急になります。このとき死亡率の対数を縦軸にするとその上昇は直線的になり、どのような割合で増加しているのかなど、分析するときに処理しやすくなります。

【用途例2(自然対数)】
 統計の世界ではデータが正規分布に従っていることを前提に集約したり検定をしたりしますが、実験で得られたデータの分布を調べると、正規分布を示さない場合がよくあります。このとき、データの対数(自然対数)をとってみると正規分布を示すことがよくあるため、対数変換をした値を使って検定などをしたりします。

【用途例3(その他)】
 常用対数や自然対数以外にも、抗原抗体反応における抗体価(※1)の表示のような場合、底を2とした対数を利用します。これは薬物を倍々に薄めていって、どれくらい薄めればアレルギー的な反応が出ないようになるかといった刺激性を表現します。

 このように、世の中の変化には対数的な現象が少なくないのです。


(※1) ある抗原(ウィルスやアレルゲンなど)に対する抗体の量を示すもので、単純に "mg"とかで表すことが難しく、特殊な方法で測定されるためにこのような変わった名称で呼ばれています。
測定したい抗体の入った液体(血清など)を、2倍ずつ連続で希釈したサンプルを用意し、それぞれのサンプルを抗原と反応させて、反応する最も薄いサンプルの希釈倍率で「抗体価」を表します。例えば1/2, 1/4, 1/8, 1/16, 1/32 という希釈サンプルで、1/16 のサンプルでは反応したが、1/32 のサンプルでは反応しなかった場合の抗体価は「1/16」です。この分母が大きくなればなるほど薄くなっても反応するということですから、「抗体価が高い」ということになります。