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神社の種類

【神社の起こり】
 お正月に神社に初詣に出かけて、いろいろなお願い事(学業成就、安産、健康、交通安全など)をする人は多いと思います。しかし、お願い事をする相手、つまり神社に祭ってある“神様“が何であるかを把握していない人は多いのではないでしょうか。

   八百万の神というように、日本ではキリスト教やイスラム教などの一神教とは異なり、様々な神が存在します。昔の日本人は山、森、浜、岩、滝など自然の中に豊富な食べ物を与えてくれる偉大な力への尊敬と地震や火山の噴火などの災害への恐れを感じていました。その中で食べ物を与えてくれるのも災害を起こすのも神の意志であると考えるようになり、自然自体を神として敬うようになってきました。

 神社はこういった神を祭る場所で、古代では自分の生まれた土地を領有、守護する神である産土神(うぶすな)型神社や、奈良時代から平安時代にかけて八幡信仰などの特定の神の祭りを広めた勧請(神仏の分身・分霊を他の地に移して祭ること)型神社、人間を怨霊としてまつる御霊型神社などが作られてきました。

 尊敬や恐れを感じるものは全て神になりえることから、勧請型神社や御霊型神社以外にも時代時代で流行した多様な民間信仰に基づいた神社がつくられるようになりました。例えば、本来の神道にはない外来の信仰(仏教)が神道化することによって作られた庶民設立型神社や寺院転向型神社などがあります。

【主な神社の種類】
 このように様々な経緯で設立された神社ですが、現在では多種多様な形で存在しています。主な神社を以下に挙げます。

稲荷社(約19800社)
   稲荷神を祭神として祀る神社を稲荷神社と呼び、全国各地に存在します。総本社は京都の伏見稲荷大社で、稲荷神は穀物・農業・商売(つまりは産業全般)の神として信仰されていて、商店内、企業のビルの屋上、工場の敷地内などにも祀られています。

八幡社 (約14800社)
 八幡神を祭神として祀る神社を八幡神社(八幡社、八幡宮)と呼び、全国各地に存在します。総本社は大分の宇佐神宮です。祭神である八幡神は応神天皇を神格化したもので、農耕神あるいは海の神とされています。鶴岡八幡宮や岩清水八幡宮が有名です。

天神社(天満宮) (約10300社)
 天満宮は、菅原道真を祭神とする神社で、政治的不遇を被った道真の怒りを静めるために神格化し祀られるようになりました。天神とも呼ばれています。道真が優れた学者であったことから天神は「学問の神様」として信仰されています。大宰府天満宮や北野天満宮が有名です。

諏訪神社 (約5700社)
 諏訪神社は、長野県の諏訪湖の両岸にある諏訪大社より祭神の勧請を受けた神社で、諏訪大社の祭神は諏訪大明神ともいわれる建御名方神(たけみなかたのみこと)とその妃である八坂刀売神(やさかとめのみこと)です。諏訪信仰は雨や風を司る竜神の信仰や、水や風に直接関係のある農業の守護神としての信仰が著名です。また水の信仰が海の守り神としても信仰されています。

神明神社 (約5400社)
 神明(しんめい)神社は、天照大神を主祭神とし、伊勢神宮内宮を総本社とする神社です。 伊勢信仰は伊勢の神宮に対する主として庶民の信仰をいい、元は祭神の天照大神が皇室の祖神とされているため、農耕儀礼と密接に結びつき広く信仰を集めてきました。

熊野神社 (約3300社)
 熊野神社は、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)より熊野権現の勧請を受けた神社で、同名または熊野社など類似の社名の神社が全国各地にあります。

春日神社 (約3100社)
 春日神社は春日大社から勧請を受けた神社で、全国各地にあります。祭神は春日神で、天児屋根命(あめのこやねのみこと)、武甕槌命(タケミカヅチオ)、経津主命(ふつぬしのかみ)、比売神(ひめのかみ)の四柱の神が本体となっていて、奈良・平城京に遷都された710年(和銅3年)、藤原不比等が藤原氏の氏神である鹿島神(武甕槌命)を春日の御蓋山に遷して祀り、春日神と称したのに始まります。

八坂神社 (約2900社)
   八坂神社は、素戔嗚尊命(すさのおのみこと)を祭神とする全国各地にある神社の名称です。総本社は京都の八坂神社で、祇園さんの愛称で呼ばれています。平安時代の始め頃に都で流行した疫病による大災厄の発生を政治的に失脚して処刑された人の怨みによる崇りであろうと当時の人々は考え、最初はその御霊を祭りましたが、怒りは治まらなかったため、より強い神仏が求められたことが、日本神話でヤマタノオロチ(八岐大蛇=あらゆる災厄)を退治し、クシイナダヒメノミコトを救って、地上に幸いをもたらしたとされる素戔嗚尊命を祭った起源とされています。 

白山神社 (約2700社)
 白山神社は、富士山、立山とともに三霊山と呼ばれる白山の神を祀る神社で、石川県白山市の白山比咩神社を総本社としています。祭神は菊理媛神(くくりひめのかみ)(白山比咩神)・伊弉諾尊(イザナギ)・伊弉冉尊(イザナミ)の三柱としているものが多くあります。白山神社は全国各地にありますが、特に岐阜県・石川県・新潟県・静岡県に多く分布しています。

住吉神社 (約2100社)
 住吉神社は住吉三神を祀る神社で、祭神の住吉三神は底筒男命(そこつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)の総称です。海の神、航海の神とされています。

日吉(山王)神社 (約2000社)
 日吉神社・日枝神社あるいは山王神社などという社名の神社は山王信仰に基づいて日吉大社より勧請を受けた神社で、大山咋神(おおやまくいのかみ)と大物主神(または大国主神)を祭神とします。
 「山王」とは、霊山を守護する神霊のことで、ここでは比叡山の地主神である大山咋神のことを指します。また、平安京遷都により、当社が京の鬼門に当たることから、鬼門除け・災難除けの社として崇敬されるようになりました。

金毘羅神社 (約1900社)
 金毘羅神社(こんぴらじんじゃ)は、香川県琴平町の金刀比羅宮を総本社とし、祭神として大物主神を祀る神社で、全国各地に存在します。金刀比羅宮は、元はその鎮座する象頭山の神を祀るものであった。古くから象頭山は瀬戸内海の航行の目印とされてきたことから、象頭山の神は航海安全の神として信仰されるようになった。また、航海安全だけでなく、祈雨の神として農民からも信仰されてきました。

恵比寿神社 (約1500社)
 蛭子神社(えびすじんじゃ、ひるこじんじゃ)はヒルコ或いはえびす或いは事代主命(ことしろぬしのみこと)を祭神とする神社です。
 「恵比寿神」とは元々、海の神で、海岸に流れ着いた見慣れないものを「えびす」と呼んで、それを海に神からの贈り物としてまつる習慣から起こったものです。ここから、豊漁、ひいては商売繁盛の神として現在に至ります。祭神がイザナギとイザナミの間の子であるヒルコや大国主命の子である事代主命であるのは日本神話が成立する過程で恵比寿神と結び付けられるようになりました。

 なお、以上の神社の他に、偉人を祭った神社(乃木神社など)や戦没者を祭った神社(靖国神社、護国神社など)のような形態の神社も数多くあります。

(神社の数は「日本人なら知っておきたい神道」 武光誠著 河出書房新社 による)