「SARAH」
サラソージュという仲睦まじい木が東にはあるという。その木の下で愛を誓った二人は深く結ばれるという。
西の都に生まれた娘、サラは東へと旅立った。シルクロードを行き来するキャラバンに付いて行ったまま帰ってこない彼を探しに。
彼の言葉が今も耳の奥に響いている。
「東へ行けばジパングという黄金の国がある。俺はそこで目一杯稼いでくる。そしたらサラ、結婚しよう。俺はお前を西の都一の花嫁にする。」
「東の国にあるサラソージュという木で作った髪飾りを付けた花嫁は永遠に幸せになれるんだって。必ずそれも持って帰ってくるから」
あれからどれだけの日が昇り、そして沈んだだろう。
彼が参加したキャラバンはもう二度も帰ってきた。近々三度目の行商に出る予定だ。そのキャラバンの人たちにいくら尋ねても彼のことを教えてはもらえなかった。皆示し合わせたように口をつぐむ。
サラは決心した。
私が東の国へ行く。そして必ず彼を見つけだす。彼が言っていたサラソージュの髪飾り、それを付けていれば絶対に見つかるはずだ。だって、サラソージュの髪飾りを付けた花嫁は永遠に幸せになれるんだもの。彼が見つからないはずはない。
ところがキャラバンの誰に聞いてもサラソージュの木も、それで作った髪飾りも見たことがないという。伝説ではないのか。彼に騙されてるんじゃないのかとまで言われたこともある。
サラは涙があふれそうになるのを必死にこらえて睨み返した。(つづく)