六芒星(ろくぼうせい)Witches

 星が地に落ち輝くとき、あなたはどちらかを選ばなければならない。

 白き衣に身を包み、白き髪と白き髭をたくわえた老人がしきりに私の名を呼んでいる。片手には自分の背丈よりも長い杖を持っている。その姿はこの老人が神々(こうごう)しい存在であることを物語っていた。

 待ちに待ったこの時が来たと流行る心で返事をした。

 白い衣を身にまといながら艶のある長い黒髪を風になびかせている乙女、それが私。少し幼さの残る丸顔をした見習い天使だ。(少し幼いって解説は余計だわ。)

 この時とは、私のように出来の悪い見習い天使にとって(出来が悪いは書かなくていいのじゃ。)、一人前の天使になるための最終テストが課せられる時ということだ。(別名崖っぷちテストと呼ばれているけど)

 白き老人(実は大天使ミカエル様だったりする)が、私に向かって最終テストの内容を下知した。それはあまりにも衝撃的だった。けれどもそのときの私は容易(たやす)いと思った。なぜなら人間の男に恋するなんて絶対にあり得ない、天使(見習いだけど)の私と下界に住む人間では身分が違いすぎるからだ。
 最終テストの内容はこうだ。下界に降り、天使だということに気づかれないよう注意しながら人間の中に入り込み共に生活する。その中で特に親しくなった男を生け贄とし、六芒星(魔方陣のことね)に捧げること。
私が女だから生け贄は男なの。そうすることで私の六芒星術は限りない力を得ることが出来る。なぜなら人間は好意を持った相手に執着する。その想いの力が六芒星にパワーを与えてくれるの。
 けれど、もしもそれにしくじったら、つまり生け贄にする人間が私にそこまでの好意を抱いていない場合六芒星は消えてなくなり私の力は消滅する。また私がその男に好意を抱き、六芒星に捧げることを拒んだときは私の存在そのものが消滅する。
 そして六芒星を作るタイミングはミカエル様の指示に従わなければならない。
 それが私にとってどれだけのことになるのか、まだこのときは(出来の悪い私には)わからなかった。(つづく)