「野辺に咲く」
輝きたい!
そう言ったあなたの言葉は今も目の前でキラキラと光に包まれている。
まぶしいあなたを私は支えていきたい。
私は大輪の花ではないし、色鮮やかな花でもない。足下にさりげなく咲いている小さな花だ。
誰もがその存在に気づかず通り過ぎていく。でも、ふと歩みを止め、足下を見たときそこに私がいる。
そう、夢を追い、輝くために、一生懸命駆けることに疲れたその瞳に映る名前もない小さな花、それが私。
私はそんな花になって傷ついたあなたを癒やしたい。
「マネージャー、マネージャーってば!」
大きな声で呼ばれてはっと我に返った私は驚いて椅子から転げ落ちた。
「アハハハッ!」軽快な笑い声が後頭部にブチ当たる。
「マネージャーまた妄想してたろ」笑い声の主がニヤけた顔で部室の入り口から迫ってくる。
「も、妄想なんてしてないもんっ。」冷静に反論しようと思っても転げ落ちた恥ずかしさで気が動転し、声がうわずってしまった。
「ハイハイ、乙女のロマンスと言いたいんでしょ。」レギュラーメンバーの中でも一、二を争うお調子者だ。
「いじわる! で、何の用なのよっ!」精一杯平静を装ってみても一度うわずった声と上気した頬は隠せなかった。このお調子者に"いじられている"私がそこにいた。どうあがいても大人には勝てない小さい子供のようだ。うまく取り繕えないもどかしさの中にありながら、なぜかそういう状況下に自分が置かれている事だけは頭の中で冷静に認識していた。だから、余計に恥ずかしかった。
「キャプテンが昨日の試合のスコアを見せて欲しいってさ」
私は床に落としたスコアブックを手に取るとソイツの顔面に向かって投げつけた。(つづく)