隋唐演義

田中芳樹 編訳
徳間書店(全5巻)


 田中芳樹さんの書かれた岳飛<(がくひ)>という作品を始めて読んだのですが、結構面白かったので、その勢いで本書を手にしました。両方の作品とも、中国の講釈師が人々の前で語るというもののようです。原作者は清の時代の褚人穫<(ちょじんかく)>という人だそうです。隋が亡んだのは619年で、唐の玄宗皇帝が崩じたのが762年です。清というと前世紀まであったのですから、約千年前のお話ですし、内容的にも歴史小説というよりもほとんどフィクションと言った方が良いと思います。三国志を元にした「三国演義」も同じようなものですが、こちらはまだ比較的歴史に基づいているようです。(勿論、良い悪いは関係ありません)
 同じ書題で安能務さんが書かれているのを最近発見しました。こちらは3分冊なのですが、目次をパラパラと見たところ本書と同様なのでおそらく原書は同じものなのでしょう。今度機会があったら読み比べてみるのも面白いかもしれません。

 ちょっと気になったのは、(原作がそうなのでしょうが)本書ではものすごい偏りがあるということです。隋の煬帝<(ようだい)>をとことん愚君に書いているところや、武則天をとことん残忍な悪者にしています。その一方、唐の高祖・李淵<(りえん)>や太祖・李世民<(りせいみん)>のあっぱれなこと。英雄である秦淑宝<(しんしゅくほう)>徐世勣<(じょせいせき)>(後の李勣)を良く描くのはわかりますが、李淵や李世民はちょっと違うだろう・・・って感じです。
 あと、有名どころでは玄宗皇帝や楊貴妃が終わりの方の主人公となっていますが、どのように描かれているかは読んでのお楽しみにしておきましょう。

 前に読んだ岳飛伝でもそうでしたが、後半の方になるとものすごい方術師が出てきたり、地獄巡りをするといったお話が出てきます。京劇を見たりしてもそう言う場面が多いですし、やっぱり中国の大衆向けというのはこんな感じなのでしょうね。各回に付けられた小題は結構面白いです。多分韻を踏んでいたりすると思うのですが、残念ながらそれがわかるほどの知識はありません。

一 群雄雌伏ノ巻
第一回  隋主兵を起して<(ちん)>を伐ち、晋王功を樹てて<(ちゃく)>を奪う
第二回  楊広<(ざん)>を施して位を<()>えんと謀り、独狐妬<(どつこと)>を逞しゅうして宮妃を殺す
第三回  雄心を逞しゅうして李靖西岳<(せいがく)>に訴え讖語<(せんご)>を造りて張衡<(ちょうこう)>李淵を危うくす
第四回  斉州<(せいしゅう)>城に豪傑身を留め、楂樹崗<(さじゅこう)>に唐公盗に<()>
第五回  秦淑宝途次<(とじ)>に唐公を救い、<(とう)>夫人寺中に世子<(せいし)>を生む
第六回  五花陣<(ごかじん)>柴嗣昌<(さいししょう)>山寺に姻を定め、一蹇嚢<(いちけんのう)>秦淑宝究途に落魄<(らくはく)>
第七回  <(さい)>太守時に随いて賞罰を行い、王小二面を転じて炎涼<(えんりょう)>を起す
第八回  三義坊に<(かん)>を当としてさん:Unicode 81E2<(そしり)>を受け、二賢荘<(にけんそう)>に馬を売りて豪傑を<()>
第九回  酒肆<(さかば)>に入りて<(にわか)>に旧識の人に逢い、飯銭を還して<(ただち)>に回郷の路を取る
第十回  東岳廟<(とうがくびょう)>に英雄<()>に染り、二賢荘に知己心を談ず
第十一回 風雪を冒して樊建威<(はんけんい)>朋を訪ね、霊丹を乞うて単雄信<(ぜんゆうしん)><(むすめ)>を生む
第十二回 p角林<(そうかくりん)>に財物露れて<(わざわい)>に遭い、順義村の擂台<(らいだい)>にて敵手に逢う
第十三回 張公謹<(ちょうこうきん)>義に<()>りて朋友を全うし、秦淑宝罪を帯びて姑娘<(おぼ)><()>
第十四回 勇なる秦瓊<(しんけい)><(かん)>を舞わして三軍を服せしめ、賢なる柳氏金を収めて一報を<()>
第十五回 秦淑宝家に帰りて母に侍し、斉国遠<(せいこくえん)>路を<()>って朋を迎う
第十六回 報徳<()>にて塑像に恩を酬い、西明巷<(せいめいこう)>にて服を<()>え夫に従う
第十七回 斉国遠興を<(みだり)>にして球場に立ち、柴郡馬<(とも)>を挟みて燈市に遊ぶ
第十八回 王碗児燈を観て<(さんげき)>を起し、宇文子<(うぶんし)>色を貪りて身を亡す
第十九回 蒸淫を<(ほしいまま)>にして<(ごう)>を賜いて同心を結び、弑逆を<(たくま)>しゅうして王を扶け御座に<(のぼ)>らしむ
第二十回 皇后宮娥<(きゅうが)><()>り歓を貪りて<(ちょう)>を博し、権臣鬼話<(きわ)>を説き陰報<(いんぽう)>に身亡ぶ

二 隋の煬帝ノ巻
第二十一回 酒肆<(さかば)>を借りて初めて金蘭<(ゆうじょう)>を結び、姓名を通じて自ら豪傑を<(あらわ)>
第二十二回 令箭<(れいせん)>を馳せて雄信名を伝え、官刑に屈して淑宝責を受く
第二十三回 酒31603<(しゅせき)>盗状<(つみ)>を供べて生死を辞する無く、燈前に捕批<(たいほじょう)><()>くは古今に見るう:Unicode 7A7B<()>
第二十四回 豪傑千秋冰霜<(ひょうそう)>の寿母を慶し、罡星<(こうせい)>一夕虎豹の佳児<(かじ)>を祝う
第二十五回 李玄邃<(げんすい)>節に関りて知己を全うし、柴嗣昌<(さいししょう)>托を請うて賍官を<(べん)>
第二十六回 <(とう)>小姐服を易えて他郷に走り、許太監<(たいかん)>身を空しゅうして虎穴に入る
第二十七回 土木を究めて煬帝豪華を逞しゅうし、浄身を思いて王義佳遇を<()>
第二十八回 衆嬌娃<(ちょうひたち)><(あやいと)>を剪りて花と為し、侯妃子詩を題して自ら<(くび)>れる
第二十九回 隋の煬帝両院にて花を観、衆夫人同舟にて<(みずうみ)>に遊ぶ
第三十 回 新歌を賭けて宝児<(ほうじ)>寵を博し、図画を観て蕭后<(しょうこう)>游を思う
第三十一回 薛治児<(せつやじ)>剣を舞わして歓を分かち、衆夫人詩を題して寵を<(あらそ)>
第三十二回 狄去邪<(てききょじゃ)>深き穴に入り、皇甫君大鼠を撃つ
第三十三回 睢陽界<(すいようかい)>にて忌に触れ斥を被り、斉州城にて居を<(ぼく)>し養を迎う
第三十四回 桃花を<(そそ)>ぎて流水歓を尋ね、玉椀を割きて真心寵に報ず
第三十五回 楽永の夕大士観を奇とし、清夜の游昭君塞<(しょうくんさい)>に泪す
第三十六回 観文殿にて虞世南<(ぐせいなん)>詔を草し、愛蓮亭にて袁宝児<(えんほうじ)>生を軽んず
第三十七回 孫安祖走りて<(とう)>建徳を説き、徐懋功<(じょぼうこう)>初めて秦叔宝と交わる
第三十八回 楊義臣<(いくさ)>を出して賊を破り、王伯當<(おうはくとう)>計を施して交わりを全うす
第三十九回 陳隋二主幽情<(ゆうじょう)>を説き、張尹二妃貶謫<(へんたく)>を重ぬ
第四十回  汴堤<(べんてい)>上の緑柳御題にて姓を賜り、龍舟内の絳仙<(こうせん)>艶色にて恩に<(うるお)>

三 太宗李世民ノ巻
第四十一回 李玄邃<(げんすい)>途に窮して<(つま)>を定め、秦叔宝<(わな)>を脱して栄に帰す
第四十二回 賞銀を貪りて・気先<(せんきせん)>命を喪い、絶計を施して単雄信<(ぜんゆうしん)>家を無くす
第四十三回 連巨真<(れんきょしん)>計を設けて賈柳<(かりゅう)><(すか)>し、張須陀<(ちょうすだ)>疏を具して秦瓊<(しんけい)>を救う
第四十四回 寧夫人路途に<(わな)>を脱し、羅士信<(らししん)>黒夜に仇を報ず
第四十五回 平原県に秦叔宝生に逃れ、大海寺に唐万仞<(とうばんじん)>義に<(じゅん)>
第四十六回 翟譲<(たくじょう)>を殺して李密友に<(そむ)>き、宮妃を乱して唐公兵を起す
第四十七回 瓊花<(けいか)>を看て楽尽き隋終り、死節に殉じ香<()>り烈を見る
第四十八回 巧計を遺して一良友唐に帰し、花容<(かよう)>を破りて四夫人志を守る
第四十九回 詩句を歌い敵国暫く君臣を許し、姻縁を締び呉越<(てき)>反って秦晋<(みかた)>と成る
第五十回  冦兵<(こうへい)>を借りて義臣叛臣を滅ぼし、宮宴を設けて曹后<(そうこう)>蕭后<(しょうこう)>を辱しむ
第五十一回 真命<(しんめい)>の主南牢に身陥ち、奇女子の巧計に龍飛ぶ
第五十二回 李世民恩に感じて友の母を<(さら)>い、寧夫人計に惑いて他郷に走る
第五十三回 周公を夢見て王世充魏を<(ほろぼ)>し、旧友を棄てて李玄邃<(げんすい)>唐に帰す
第五十四回 程咬金<(ていこうきん)>母に<(あい)>て恩を受け、王伯當友の為に躯を<()>
第五十五回 徐世勣<(じょせいせき)>一慟して喪礼を為し、唐秦王親言して軍心を服せしむ
第五十六回 神勇を顕して敬徳唐に帰し、従軍を代りて木蘭<(もくらん)>父に孝たり
第五十七回 木蘭に遇いて<(とう)>公主契りを結び、袍襟<(ほうきん)>を割きて単雄信<(ぜんゆうしん)>義を断つ
第五十八回 <(とう)>建徳谷口に<(とら)>われ、徐懋功<(じょぼうこう)>草蘆に約を訂す
第五十九回 <(こん)>英雄犴牢に首を<(あつ)>め、奇女子鳳閣に恩に<(うるお)>
第六十回  囹圄<(れいご)>を出でて英雄惨戮<(さんりく)>され、天涯を走りて淑女書を伝う

四 女帝武則天ノ巻
第六十一回 花又蘭<(かさらん)>愛を忍んで身を守り、徐世勣功を建てて姓を賜る
第六十二回 羅成<(らせい)>真情を説いて双美を<()>、功臣皇恩に依りて佳偶を<()>
第六十三回 王世充恩を忘れて叛を<(かさ)>ね、羅士信<(らししん)>節を守りて刀を受く
第六十四回 唐の秦王宮門に帯を掛け、宇文妃<(うぶんひ)>龍案に詩を解く
第六十五回 趙王龍虎関に雄踞<(ゆうきょ)>し、柴紹五姑山<(ごこさん)>に敵を討つ
第六十六回 普救院に秦王服毒し、玄武門<(げんぶもん)>に兄弟相撃つ
第六十七回 雷塘墓<(らいとうぼ)>に夫婦節に殉じ、便橋上に突厥<(とつけつ)>和を結ぶ
第六十八回 長城を越えて李靖漠北<(ばくほく)>を征し、地獄を巡りて唐主因縁<(いんねん)>を知る
第六十九回 唐の太宗兵を起して高麗を討ち、隋の蕭后<(しょうこう)>帝を迎えて往事を語る
第七十回  英主<()>を定めて<(はか)>に帰り、武照<(こくい)><(かず)>きて寺に入る
第七十一回 武照髪を蓄えて宮に還り、蕭妃<(かめ)>に入りて兇を罵る
第七十二回 中宗言を<(みだら)>にして玉座を失い、酷吏権を専にして士庶を虐す
第七十三回 安金蔵<(あんきんぞう)>腹を割いて冤を訴え、駱賓王<(らくひんのう)>檄を草して罪を討つ
第七十四回 国号を定めて女主尊を称し、太后を罵って懐義<(かいぎ)>躯を滅す
第七十五回 昌宗を破って仁傑<(きゅう)>を得、義兵を起して唐室復興す
第七十六回 綵楼<(さいろう)>を結んで婉児<(えんじ)>詩を評し、橙市に遊んで帝后行楽す
第七十七回 昏主<(こんしゅ)><(ちん)>して<(つい)>に児戯と同じく、逆后を斬りて大いに人心を快くす
第七十八回 <(やさ)>しき上皇悪公主を庇い難く、生ける張説死せる姚崇<(とうすう)>に及ばず
第七十九回 梅妃<(ばいひ)>愛を恃んで歓を追い、楊妃<(ようひ)>恩を承けて寵を奪う
第八十回  安禄山<(あんろくさん)>宮に入りて妃子に見い、高力士街を行きて状元<(じょうげん)><(もと)>

五 玄宗と楊貴妃ノ巻
第八十一回 安禄山<(あんろくさん)>寵を極めて後宮を乱し、楊貴妃髪を<()>って君側に還る
第八十二回 李謫仙<(たくせん)>詔に応じて国書に答え、高力士<(こうりきし)>讒を進めて太白を追う
第八十三回 青目<(せいもく)>を施して学士英雄を識り、赤心を信じて胡人藩鎮<(はんちん)><()>
第八十四回 諸美人屏風を出でて楼上に歌い、唐明皇<(とうのめいこう)>空中を歩いて諸方に遊ぶ
第八十五回 羅公遠<(らこうえん)>封書を送って予言を作し、安禄山大軍を擁して風雲を望む
第八十六回 長生殿に半夜<(ひそか)><(ちか)>い、勤政楼に通宵<(てつや)>歓び宴す
第八十七回 雪衣女<(せついじょ)>経を誦して得度<(とくど)>し、赤心児<(せきしんじ)>主を欺いて威を作す
第八十八回 安禄山范陽<(はんよう)>に造反し、封常清<(ほうじょうせい)>東京<(とうけい)>に募兵す
第八十九回 唐の明皇夢中に鬼に<()>い、雷萬春<(らいばんしゅん)>都下に兄を尋ぬ
第九十回  忠貞に<(とう)>って顔真卿<(がんしんけい)>義を起し、妬忌<(とき)>に遭って哥舒翰<(かじょかん)>師を喪う
第九十一回 長安より玄宗出奔し、馬嵬<(ばかい)>にて貴妃縊死<(いし)>
第九十二回 霊武に留まりて諸君<(たいし)>位に即き、長安を陥して逆賊凶を<(ほしいままに)>
第九十三回 凝碧池<(ぎょうへきち)>雷海青<(らいかいせい)>節に殉じ、普施寺<(ふせじ)>王摩詰<(おうまきつ)>詩を吟ず
第九十四回 安禄山腸を屠して命を<(そこな)>い、南霽雲<(なんせいうん)>指を噛んで師を乞う
第九十五回 李楽工<(りがくこう)>笛を吹きて虎妖<(こよう)>に遇い、王供奉<(おうぐぶ)><()>を聴きて神女に謁す
第九十六回 百口を弁じて郭子義<(かくしぎ)>恩に報じ、両京を復して広平王<(とがら)>を奉す
第九十七回 盈々<(えいえい)>情を<(あつ)>めて旧好を<(つな)>げ、梅妃<(ばいひ)>躯を全うして故宮に返る
第九十八回 錦沓<(にしきのくつ)>を遺して老嫗<(ろうおう)>銭を<(かせ)>ぎ、雨鈴を聴いて楽工曲を度す
第九十九回 逆臣を<(ゆる)>して上皇旧恩を念い、前縁を了して梅妃仙境に還る
第百回   西内<(せいだい)>に遷して離間す父子の情、鴻都<(こうと)>に遣りて結證<(けっしょう)>す隋唐の事

一 群雄雌伏ノ巻 二 隋の煬帝ノ巻 三 太宗李世民ノ巻 四 女帝武則天ノ巻 五 玄宗と楊貴妃ノ巻

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