新選組血風録

司馬遼太郎 著
中公文庫


 浅田次郎さんの『壬生義士伝』から始まり、北方謙三さんの『黒龍の柩』、司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』と辿った新選組めぐりの終着点(?)です。どなたかが本作品のことを司馬遷の『史記』でいうところの「列伝」であると書かれていましたが、確かにそういう雰囲気です。司馬遷は「列伝」という形式で人物描写を通してその時代を表現しましたが、司馬遼太郎さんは正面から新選組のことを書くのではなく、いろんな人物描写を通して書きたかったのではないかという気がします。また、新選組に対するレクイエムなのかもしれません。

 上に書いたように、本書はそれぞれ30ページ程度の短編集といってもいいと思います。それぞれの題と簡単な紹介をしましょう。

主役(?) 簡単な説明
油小路の決闘 篠原泰之進 新選組を乗っ取ろうとした伊藤甲子太郎<(かしたろう)>一派で、後に官軍に加わり維新後も長生きした人物です。
芹沢鴨の暗殺 芹沢鴨 近藤勇、土方歳三とともに新選組の創業者ともいえる人物ですが、粗豪なだけで人望もありませんでした。
長州の間者 深町新作 京都浪人であった深町は小物屋おそのと夫婦となります。武士を捨てるかと悩みますが、長州の吉田稔麿に請われて長州の間者となります。
池田屋異聞 山崎<(すすむ)> 山崎は実は赤穂遺臣で討ち入りに加わらなかった奥野将監<(しょうげん)>の末裔でした。人々から軽蔑を受けていたわけを知ると世間に復讐しようとしたのでした。
鴨川銭取橋 武田観柳斎 出雲出身で長沼流軍学の免許を持つ武田は剣客ばかりの新選組の中で異色でした。しかし近藤にはおべっかを使い下には酷薄で人望はなく、薩摩に接近していきます。
虎徹 近藤勇 虎徹とは江戸初期の刀鍛冶で、「石灯籠切」というほどのものを残しています。近藤勇が江戸から京に出る前に求めたもので、近藤は虎徹には憑きものがあると信じています。
前髪の惣三郎 加納惣三郎 加納惣三郎は京で隊士を募集した際に新選組に入隊しました。応募者の中でもその剣の腕は抜群でしたが、面を外すと前髪を残した美少年でした。
胡沙笛を吹く武士 鹿内薫 鹿内は奥州南部出身で京の外れで故郷の胡沙笛を吹いているときに小つるという髪結と出会い、所帯を持ちました。鹿内に子ができ、小つるとの生活のなかで里心が生まれます。
三条<(かわら)>乱刃 国枝大二郎 井上源三郎は新選組の幹部でしたが剣の腕はそれほどではなく、国枝もそれほどできるわけではありませんでした。この二人が道場で練習しているのを窓から窺い「新選組とは、この程度か」と声高に嘲笑するものがいました。
海仙寺党異聞 長坂小十郎 小十郎は新選組入隊の際、武芸で身を立てるのは気が進まず会計方となりました。しかし、「士道不覚悟」の罪となった同郷の中倉主膳の首を斬るはめになりました。そして、敵討ちに海仙寺に集う過激な水戸藩士に斬り込みます。
沖田総司の恋 沖田総司 総司は池田屋事件のとき、大量に血を吐いて九死に一生を得ます。労咳(肺結核)に犯されていたのです。総司は他人には明るく接していますが、ある日一人で医者のもとへ行きます。
槍は宝蔵院流 谷三十郎 谷は宝蔵院流槍の名手というふれ込みで新選組に入隊します。近藤はその血筋に惚れ込み、その子周平を自分の養子にします。それをいいことに谷の傲慢さはますます高まるのですが、池田屋事件の際に周平の怯懦が明らかになります。
弥兵衛奮迅 富山弥兵衛 弥兵衛は薩摩示現流の腕利きでした。新選組にとって薩摩藩は不倶戴天の仲ですが、新選組を乗っ取ろうと考えていた伊藤甲子太郎には薩摩藩との繋がりは魅力があり、私闘で芸州藩士を斬った弥兵衛に入隊をすすめるのでした。
四斤山砲 大林兵庫 新選組幹部の永倉新八に剣の手ほどきをした者だといって出羽浪人大林兵庫が訪ねてきます。しかし、永倉には全然記憶にありません。大林は砲術に明るく近藤の信頼を得ますが、それまで新選組で砲術師範頭であった阿部十郎はおさまりません。
菊一文字 沖田総司 刀屋播磨屋道伯は鎌倉期の古刀、菊一文字則宗を手に入れます。値段も付けられないほどの尤物でしたが、それを懇意の総司に貸すというのです。

 新選組血風録

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