三国志

北方謙三 著
角川春樹事務所(全13巻)


 この書の冊数に圧倒されて手を伸ばすことができませんでしたが、ついに読むことにしました。元々長いお話なのですが、吉川英治さんの『三国志』全8巻を遙かに越えるボリュームです。今年の夏休みはこの作品と付き合いました。

 まるでテレビドラマような展開で読みやすいです。また、本書の最大の特徴は善玉・悪玉がなくて全ての英雄を英雄らしく描いているところです。曹操は三国演義ではかなり悪役風にゆがめられていますが、本書ではそんなことはありませんし、劉備にしてもずるい所があります。あの呂布が素晴らしい英雄に描かれています。本書を読むと、いろいろな人物のイメージが変わります。
 三国演義に描かれている、薄っぺらいというか安っぽい大衆向けという感じの演出を排除してあるのにも好感を持っています。例えば、劉備・関羽・張飛が兄弟の契りを桃園で結ぶシーンとか、呂布が董卓を討つという下り、劉備が諸葛亮を招くときの三顧の礼、長坂の戦い、赤壁の戦い・・・これらが実に自然です。というか、北方さんの世界に引きずり込まれているだけかもしれませんが。
 ただし、やっぱりそれだけでは面白くないというのか、フィクション的な記述も結構あります。孫策や張飛が死ぬところとか、それ以外にも怪しい諜者とか。まぁ、これは読んでのお楽しみとしておきましょう。

 以下に各巻の副題のみをご紹介します。三国志ファンの方なら、これを見ただけでおおよその流れを読みとってしまうでしょうね。

【一の巻 天狼の星】
・馬群 ・砂塵遠く ・天子崩御
・洛陽内外 ・諸侯参集 ・群雄の時
・地平はるかなり

【二の巻 参旗の星】
・烏の翼 ・降旗 ・黒きけもの
・大志は徐州になく ・流浪果てなき ・それぞれの覇道

【三の巻 玄戈<(げんか)>の星】
・光の矢 ・情炎の沼 ・原野駈ける生きもの
・追撃はわれにあり ・海鳴りの日 ・亡びし者遠く

【四の巻 列肆<(れっし)>の星】
・遠い雷鳴 ・わが立つべき大地 ・光と影
・策謀の中の夢 ・風哭(な)く日々 ・乾坤(けんこん)の荒野
・三者の地

【五の巻 八魁<(はっかい)>の星】
・軍門 ・勇者の寄る辺 ・生者と死者
・制圧の道 ・戦のみにあらず

【六の巻 陣車の星】
・辺境の勇者 ・わが名は孔明 ・天地は掌中にあり
・知謀の渦 ・橋上 ・揚州目前にあり

【七の巻 諸王の星】
・千里の陣 ・風下の利 ・夜が燃える
・わが声の谺(こだま)する時 ・病葉の岸 ・秋(とき)

【八の巻 水府の星】
・野の花 ・長江の冬 ・乱世再び
・曇天の虹 ・新しき道

【九の巻 軍市<(ぐんし)>の星】
・たとえ襤褸(らんる)であろうと ・荊州の空 ・新たなる荒野
・漢中争奪 ・北へ駈ける夢 ・野に降る雪

【十の巻 帝座の星】
・烈火 ・冬に舞う蝶 ・めぐる帝位
・去り行けど君は ・死に行く者の日々 ・遠い明日

【十一巻 鬼宿の星】
・前夜 ・戦塵の彼方 ・いつか勝利の旗のもとで
・去る者もあり ・滅びの春 ・月下の二人

【十二の巻 霹靂<(へきれき)>の星】
・南中の獅子 ・さらば原野よ ・北への遠い道
・天運われにあらず ・再起するは君 ・老兵の花

【十三巻 極北の星】
・降雨 ・山に抱かれし者 ・両雄の地
・敗北はなく勝者も見えず ・日々流れ行く ・遠き五丈原

一の巻 天狼の星 二の巻 参旗の星 三の巻 玄戈(げんか)の星 四の巻 列肆(れっし)の星 五の巻 八魁(はっかい)の星 六の巻 陣車の星 七の巻 諸王の星 八の巻 水府の星 九の巻 軍市(ぐんし)の星 十の巻 帝座の星 十一の巻 鬼宿の星 十二の巻 霹靂(へきれき)の星 十三の巻 極北の星

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