ローマから日本が見える

塩野七生
集英社文庫


 学生向けに「歴史を知るとはどういうことか」ということを丁寧に話して聞かせる、という感じの作品でしょうか。作者である塩野さんの代表作は『ローマ人の物語』ですが、この作品は単行本15冊という大作ゆえに読み始めるにはちょっと勇気がいります。(私もそうでした)この大作のなかで、作者が若い人たち(だけでもありませんが)に言いたいことをコンパクトにまとめられたのが本書です。
 裏表紙には以下のように大層に書かれていますが、そんなに気張ったという感じではありません。
 以下が目次です。『ローマ人の物語』を読まれた方にとっては、「うん、うん」と作者の言いたいことのイメージが浮かびますね。
はじめに――ローマ学の世界へようこそ!
 第1章 なぜ今、「古代ローマ」なのか
 第2章 かくしてローマは誕生した
 第3章 共和政は一日にしてならず
 第4章 「組織のローマ」、ここにあり
 第5章 ハンニバルの挑戦
 第6章 勝者ゆえの混迷
 第7章 「創造的天才」カエサル
 第8章 「パクス・ロマーナ」への道
 第9章 ローマから日本が見える
【特別付録】 英雄たちの通信簿

 最初の所に作者の「歴史」というものに対する考え方が述べられています。
 このようなことは『ローマ人の物語』を読んでみるとよく理解できます。思えば、私の若い頃も年代や人名などをを憶えるのが嫌いでした。でも、高校時代、大きな流れを追いかけるようになったとき、日本史が好きになりました。成績はいまいちでしたが・・・(苦笑)
 ついでにもうひとつ、第5章「ハンニバルの挑戦」の所に書かれていることをご紹介しましょう。
 このようにローマの歴史を紹介しながら、最後に第9章「ローマから日本が見える」と題して作者の思いを書かれています。ローマ人に惚れ込んだ作者が、「ローマ」から「日本」への思いでしょうか。
 最後に、作者は日本人は欧米人と違って「キリスト教」というフィルターを掛けられたことはなく、ローマ史に関しては白紙状態だったので素直な気持ちでローマ人たちの知恵を学べるのではないかと言われています。
 特別付録としてちょっとミーハーチックですが「英雄たちの通信簿」という、作者の独断と偏見(?)によるリストが書かれています。評価ポイントとしては、イタリアの普通高校で使われている歴史教科書に書かれているものだそうです。
 いやはや、こういうことを聞くと「日本の教育ってなんなんだ」という気がします。イタリアの普通高校は大学での専門教育を受けるに必要とされる基礎、一般教養を与える機関なのだそうです。なので、日本でいえば大学の教養課程で使われるテキストと思えばいいようです。
 なお、このリストにはアレクサンダー大王、ペリクレス、ハンニバルというローマとかかわりの深い3人も入っています。個々の内容については、本書に詳しく書かれているので興味のある方はどうぞ。

 

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