長安異神伝 乱紅の琵琶

井上祐美子 著
中公文庫


 先日より読み始めた井上祐美子さんの『長安異神伝』シリーズの第2作です。この前に読んだ『将神の火焔陣伝』も面白かったので、本書にも手を出してしまいました。読む順序が逆になってしまいましたので、前後のつながりがうまくいかなくなってしまいました。やっぱりものごとの順序は守るべきでしょうか。
 裏表紙の紹介文にはこう書かれています。

「夢に…悩まされておいでですね」そういって女は紅いくちびるで艶然と微笑った。長安に巣喰う悪霊を始末するため人界に降りた、顕聖二郎真君。黄塵舞う春の市でごろつきから助け出した美女は、謎めいたことばで再会を約した。琵琶を抱えたその女の出現で二郎の悪夢は現実となる。
――中国の人々に口伝で親しまれた神話中の武神を唐代にいきいきと描き出す。
 本作品はこれまで読んだものと違って、どちらかというと「恋愛小説」っぽくなっています。二郎真君と翠心との恋のお話がメインテーマでしょうか。(これは勝手な思いですが)たぶん、著者も琵琶を抱えた謎の女と二郎真君とのかかわりを描きながら、実は翠心のことが真ん中にある・・・という感じでした。
 本シリーズにはユニークな人びとが出てきますが、本作品には韋護という真面目一点張りで冗談も通じない武神が出てきます。二郎が天帝に対して叛逆心を抱いているという話を真に受けて調査のために地上へ降りてきたのでした。彼は地上のものはけがらわしくて口にできないとまで言います。しかし、彼は二郎の部下で二郎を憧れていた一人でした。この白面の貴公子の心の中がどう移っていくのか、これも興味深いところです。
 本書でも二郎と東方朔との掛け合い漫才的なやりとりはふんだんに出てきますが、ちょっと悪のりしすぎかな・・・とも思えます。まぁ、読んでみて下さい。全体の雰囲気は、ここは長安ではなくて平安京といってもいいような感じでした。所々に出てくるあざやかな色が印象的で、赤い牡丹と白い木蓮の対比など思いうかべるだけでもきれいなものです。
 本書では二郎真君の秘密が明らかになります。なぜ天帝に逆らい続けるのか、千年以上前に行われた天界の戦の秘密などこのシリーズファンの方であれば読んでおかなければなりません。(笑)

 乱紅の琵琶

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