王妃の離婚

佐藤賢一 著
集英社


 このところ、読む本といえば中国ものか犬ものばかりでしたが、ある人に薦められてこの本に手を出してみることにしました。本作品の背景は中世フランスで、ルイ11世の時代です。ちなみに、このルイ11世は本書に書かれているイメージ通りなのか、広辞苑には載っていませんでした。9世や11世、13世、14世などは載っており、結構な英傑だったように書かれています。
 本作品は3部構成になっています。
  プロローグ
  第一章 フランソワは離婚裁判を傍聴する
  第二章 フランソワは離婚裁判を戦う
  第三章 フランソワは離婚裁判を終わらせる
  エピローグ
 これを見ればおわかりでしょうが、離婚裁判が主題です。最初は「離婚裁判?なんだかつまらなさそう・・・」なんて思っていたのですが、第2章に入ってから盛り上がってきました。おもしろいです。(キッパリ)

 冒頭のプロローグには、パリの学生街カルチェ・ラタン(ラテン語の街)でかわいい女性ベリンダと同棲するパリ大学の学生フランソワが登場します。このカルチェ・ラタンはどちらかというと、手に負えない学生たちを押し込めておく街という感じです。学生たちは酒を飲んでは大暴れするのですね。
 カルチェ・ラタンにはアラベールとエイローズという伝説の恋物語がありました。アラベールは大学者であり、前衛的な学説を唱え、その攻撃的な姿勢は学究の鑑とされていました。しかし、男の鑑として憧れを抱くものは稀でした。優柔不断で未練がましく、うじうじと女を捨てることもできないくせに、意を決して女のためにすべてを捨てることもできない。結婚しようと持ちかけながら、世評を気にして事実を隠し、田舎にやって赤子を生ませ、その末に女を修道院に入れてしまうような、なんとも器の小さな男だったのです。
 フランソワは18歳でマギステルと呼ばれる学位を取得した秀才であり、僧侶でした。僧侶は結婚などできないのですが、ベリンダに「結婚しよう」といいます。フランソワ27歳、ベリンダ16歳の冬でした。

 時は移り、ジャンヌ・ドゥ・フランスという王妃が被告という離婚裁判が開廷されます。原告はフランス国王ルイ11世でした。この裁判の傍聴席には47歳になる田舎の弁護士、フランソワがいました。
 この裁判、国王が原告という最初から見え見えのものでした。被告側の弁護士はやる気がないし、弁護人側の証人も原告側に取り込まれた人間ばかりで、出てくるのは被告に不利な証言ばかり。「そもそも、前王である暴君ルイ11世に強制された結婚であり、王妃が醜いからもともと結婚などしていない」という離婚請求です。
 庶民には王妃に同情する風が吹いていますが、被告側には全く勝てるような兆しさえありません。

 傍聴席にいたフランソワは、彼を見いだした王妃の警固隊長カニンガムにいささか手荒くジャンヌ王妃のもとへ連れてこられます。弁護を依頼されますが、フランソワはそもそも暴君ルイ11世にひどい目に遭わされており、その娘の弁護士など引き受けるわけがありません。
 しかし、処女検査を要求されたジャンヌ王妃は役に立たない弁護士を通じて新弁護士を立てる要求を行います。その新弁護士とはフランソワのことでした。

 フランソワはカルチェ・ラタンで「伝説の男」といわれていました。彼の吐いたことばが今でも「伝説の言葉」といわれていたのです。
「インテリは権力に屈したら終わりだ。意味がなくとも常に逆らわねばならない」

 「伝説の男」に共鳴する学生達を引き連れて、フランソワの権力に対する戦いが始まります。

 王妃の離婚

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