壬生義士伝

浅田次郎 著
文春文庫


 本書の主人公は新撰組の吉村貫一郎という侍です。新撰組と言えば、多くの魅力的なキャラクターを抱え、幕末の活躍(?)はいろいろな小説に取り上げられていますが、本作品はそれらとはちょっと一線を画しています。彼がなぜ「義士」なのか、彼の生涯はどうだったのか、本作品は浅田さん独特(?)の手法でグングン引きずり込んでくれます。この浅田さんの手法というのは、普通の小説(主人公について記述)と関係者へのインタビューとを交互に織り交ぜていくというものです。
 本作品はネットで紹介していただいて読み始めたものです。浅田さんの作品としては『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』に続いて3作目ですが、すべてお気に入りとなった「当たり」でした。なお、本作品は第13回柴田錬三郎賞を受賞したそうです。


 上で本作品の書き方を紹介しましたが、以下のような構成になっています。浅田さんの作品には推理をさせるところがあり、ネタをばらしてしまうとこれから読む方の興味が半減してしまいますので、これだけにしておきましょう。(これでも書きすぎ?)

吉村貫一郎が鳥羽伏見の戦いの後、満身創痍で大坂の南部藩屋敷にたどり着くシーン
神保町のすみっこにある新撰組生き残りの居酒屋主人へのインタビュー
貫一郎が国元に残してきた最愛の妻しづへの思い、独白
南部出身の実業家、桜庭弥之助へのインタビュー
自分に切腹を命じた次郎衛への貫一郎の独白
楽隠居している新撰組生き残り稗田利八(池田七三郎)へのインタビュー
故郷の人々への貫一郎の独白
警視庁の非職警部、新撰組生き残り藤田五郎(斎藤一)へのインタビュー
娘みつに思いをよせる貫一郎の独白
満州、奉天で町医者をしている大野千秋よりの手紙
次郎衛の思いを慮る貫一郎の独白
新宿でやくざの親分をしている次郎衛の元中間、佐助へのインタビュー
覚悟を決めた貫一郎の独白
再び居酒屋主人へのインタビュー
箱舘五稜郭で奮戦するも倒れた貫一郎の長子、嘉一郎の母に向けた独白
貫一郎が目にしたことのなかった次男(貫一郎)へのインタビュー
大野次郎右衛門が越後の豪農に宛てた、佐助に託した貫一郎の子を頼むという手紙
 貫一郎が「守銭奴」などと呼ばれながらも、国元に残した家族への思いが「義士」のゆえんでした。国とか主君とかではなく、真の「忠義」の対象は自分の家族なのです。その家族を守るために命を懸けたのが吉村貫一郎でした。
 本書を読んで、涙したという人が多いようです。あなたはどうでしょうか?

 壬生義士伝 上  壬生義士伝 下
(以下、2006/2/5 追記)
 4年ほど前のお正月、「新春ワイド時代劇」というテレビ番組で『壬生義士伝』という放送がされました。この番組は「10時間ドラマ」という午後から始まって深夜に終わるというもので、こんな長い時間テレビにかじり付く気力もなく、そのときには見るのを敬遠しました。
 本作品はその後映画にもなっていますが、これまで本で原作を読んだものを映像化したものにはイメージを壊されることが多くて、あまり見ないようにしていました。しかし、先日レンタルビデオにこの10時間ドラマがあるのを発見して見てみようかな、とちょっと心が揺れたのです。それと同時に、また読みたくなって再読したのですが、やっぱり今回も泣かされました。(笑)
 そして、本書を読み終えたあとビデオを見はじめましたのですが、う〜ん、ちょっと違うぞという感じ。4本組の3本までしかまだ見ていないのですが、やっぱり見なかった方がよかったかな・・・と思いはじめました。このまま残り1本を見るかどうか微妙なところ。主役の渡辺謙さんや大野次郎右衛門の内藤剛志さんなどいい演技を見せてくれていますが、いかんせん、原作がすばらしいのでやっぱり見劣りしてしまう感じです。
 壬生義士伝〜新選組で一番強かった男〜 第一部
 さて、本作品の主役は吉村貫一郎という実在の新選組隊士なのですが、彼の姿は小説家子母澤寛の創作である可能性が高いそうです。子母澤さんは北海道出身なのですが、その祖父は箱館戦争に敗れてそのまま北海道に定住した人だそうで、旧幕臣の話などをまとめて「新選組三部作」という作品を書いたとのことです。この中に本書に登場する吉村のことが書かれているとのことです。

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