口語訳 古事記 [完全版]

三浦佑之 著
文藝春秋


 今回読んだのは言わずとしれた『古事記』です。子供の頃にはいろいろな神話という形で読んでいたものですが、ちゃんと読んだのは初めてでした。子供の頃に読んだのは「古事記物語」などという、古事記の中でも面白いところのダイジェスト版といったもので、子供心にも面白かったものでした。

 古事記の出だしは以下のようです。(広辞苑より)

天地<(あめつち)>初めて<(ひら)>けし時、高天<(たかま)>の原に成れる神の名は、天之御中主<(あめのみなかぬしの)>神。次に高御産巣日<(たかみむすひの)>神。次に神産巣日<(かみむすひの)>神。此の三柱の神は、<(みな)>独神<(ひとりがみ)>と成り<()>して、身を隠したまひき。
次に国稚<(わか)>く浮きし脂の如くして、久羅下那州多陀用弊流<(くらげなすただよえる)>時、葦牙<(あしかび)>の如く萌え<(あが)>る物に因りて成れる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅<(うましあしかびひこじの)>神。次に天之常立<(あめのとこたちの)>神。此の二柱の神も亦、独神と成り坐して、身を隠したまひき。
 それが本書ではこんな感じで書かれています。
 なにもなかったのじゃ・・・、言葉で言いあらわせるものはなにも。あったのは、そうさな、うずまきみたいなものだったかいのう。
 この老いぼれはなにも聞いておらぬし、見てもおらぬでのう。知っておるのは、<(あめ)><(つち)>とが出来てからのことじゃ・・・

 <(あめ)><(つち)>とがはじめて姿を見せた。その時にの、高天<(たかま)>の原に成り出た神の御名は、アメノミナカヌシじゃ。つぎにタカミムスヒ、つぎにカミムスヒが成り出たのじゃ。この三柱のお方はみな独り神での、いつのまにやら、その身を隠してしまわれた。
そうよのう、できたばかりの下の国は、土とは言えぬほどにやわらかくての、<(まり)>に浮かんだ鹿猪<(しし)>の脂身のさまで、海月<(くらげ)>なしてゆらゆらと漂っておったのじゃが、そのときに、泥の中から葦牙<(あしかび)>のごとくに萌えあがってきたものがおっての、そのあらわれ出たお方を、ウマシアシカビヒコヂと言うのじゃ。われら人と同じく、土の中から萌え出た方じゃで、この方が人びとの<(おや)>と言うこともできるじゃろうかのう。つぎにアメノトコタチ・・・、この方は<(あめ)>に成ったお方じゃ。このお二方も独り神での、いつの間にやら、すがたを隠してしまわれたのじゃ。
 語り部のおじいさんが子供に昔話を語るという感じです。もともと、古事記は稗田阿礼<(ひえだのあれ)>が誦習していたものを太安万侶<(おおのやすまろ)>という官僚が書物にしたと言われていますが、筆者はその残された文字ではなく、語り言葉で表したかったのだそうです。書かれていることは殆ど理解できないものが多いですが、細かくて膨大な註釈が書かれていますので問題ありませんでした。でも、歴代の神(人)の名前を延々と語るところはさすがに読み飛ばしてしまいました。

 本書の中で面白かったのは、昔、子供の頃にも読んだ記憶のあるようなものでした。
 ・アマテラスとスサノヲの確執(神代篇、其の二)
 ・ヤマトタケルの活躍(人代篇、其の三)
 ・ツブラノオホミの最後(人代篇、其の八)

 以下に本書の構成をご紹介します。「はは〜ん」という感じで昔を思い出されるのではないでしょうか?

第一部 神代篇
 其の一 イザナギとイザナミ ―― 兄妹の国土創成
 其の二 アマテラスとスサノヲ ―― 高天の原の姉と弟
 其の三 スサノヲとオホナムヂ ―― 英雄文化の登場
 其の四 ヤチホコと女たち ―― 求婚と嫉妬の物語
 其の五 国譲りするオホクニヌシ ―― 天つ神と国つ神
 其の六 地上に降りた天つ神 ―― 天孫の日向三代
 其の七 東へ向かうイハレビコ ―― 征服する英雄
第二部 人代篇 上
 其の一 初国知らしし大君 ―― 夢に教える神
 其の二 サホビコとサホビメ ―― 崩壊する兄妹の絆
 其の三 ヤマトタケルの戦いと恋 ―― 天翔ける英雄
 其の四 海を渡るオキナガタラシヒメ ―― 戦う女帝
 其の五 ホムダワケとオホサザキ ―― 河内王朝の成立
第三部 神代篇 下
 其の六 オホサザキをめぐる女たち ―― 苦悩する聖帝
 其の七 オホサザキの息子たち ―― 渦巻く陰謀
 其の八 恋を貫く兄と妹 ―― 臣下たちの選択
 其の九 苛立ち求めるワカタケル ―― 最後の英雄
 其の十 逃れ隠れるオケとヲケ ―― 灰まみれの王子

 口語訳 古事記 [完全版]

戻る