碧血剣

金庸 著
徳間文庫


 先日読んだ『秘曲 笑傲江湖』という作品がとてもおもしろかったので、続けて金庸さんの武侠小説を読みました。

 時は17世紀半ば、明朝末期です。無能な皇帝を操る奸臣がはびこり、腐敗した王朝の最後は各地で反乱が起き、その渦が大きくなってついには滅んでしまうというパターンがほとんどですが、この時代もまさに同じでした。李自成という反乱軍が大きな勢力を持ち京師(首都・北京)へ攻め込もうという勢いです。一方北には女真族の英雄ヌルハチの建てた大清国が迫っていました。まさに内憂外患の時代でした。
 清は再三攻め込もうとしていましたが、山海関をどうしても抜くことができませんでした。この山海関を越えるとすぐに北京なのですが、その前に寧遠城がありこの城を守っていた袁崇煥を攻めあぐんでいました。そして、この寧遠城にはポルトガル人が持ち込んだ「紅夷大砲」という強力な武器があり、ヌルハチは30万人で攻めましたが結局攻め落とせず、この戦いで負った傷がもとで死んでしまいホンタイジが後継者となりました。このように袁崇煥は明朝最後の希望ともいうべき人物でしたが、ホンタイジの計略により明の皇帝・崇禎は袁崇煥を処刑してしまいます。

 袁崇煥には1人の子がいました。名は袁承志、崇煥の部下たちに大切に育てられました。袁崇煥は叛逆人として処刑されましたので、その親類たちも殺されています。袁承志は両親の仇を討つべく、華山派に弟子入りして武芸を身につけます。ふとしたことから洞窟の中で、伝説の武術家・金蛇老君の異名を持つ夏雪宜の人骨を発見し、彼の秘術を身につけます。それを記した「金蛇秘笈」という秘伝書を巡って不思議な事件が起きていきます。
 無敵の武芸者となった袁承志は、闖王となって明に叛乱を起こしていた李自成に協力します。両親の仇としたのは皇帝崇禎です。闖王李自成は明を滅ぼし新しい王朝を建てますが、結局なにも変わりませんでした。袁承志は李自成は民を虐げる王朝に替って民のための世の中を創ってくれると信じていたのですが、権力は結局同じだったのです。

 お話自体はおもしろいのですが、ちょっと物足りなさが残りました。その理由は、主人公袁承志が完璧すぎるキャラクターだからでしょう。強敵と手合わせしても一度も負けませんし、性格は素直で実に良い人物です。そんな主人公の周りにはたくさんのおもしろい人物たちが登場して変化がありますが、やはり完璧な主人公はちょっと興ざめです。(これって、私だけ?)

 日本では「武侠小説」はマイナーなのでしょう、巻末に付録として用語解説が載っています。結構おもしろいので、一部をご紹介しましょう。
 さて、いかがでしょうか。「武侠小説」の雰囲気が伝わりましたでしょうか?

 碧血剣 (1) 復讐の金蛇剣  碧血剣 (2) ホンタイジ暗殺  碧血剣 (3) 北京落城

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