真説 重耳

水上静夫 著
時事通信社


 本書の副題には「覇者 晋の文公の生涯」とあります。この駄文をお読みの方はご存じだと思いますが、中国の春秋時代には各地の諸侯をまとめた覇者と呼ばれる人がいました(春秋の五覇と呼ばれています)。その中で、晋の文公重耳は斉の桓公に続いて覇者となった人です。
 重耳といえば、宮城谷昌光さんの名作『重耳』は私のお気に入りで何回か読みました。本書を図書館で見つけたとき、すぐに読もうと手に取った次第です。

 著者ははしがきに以下のように書かれています。

 いったい周王朝の歴史の中で、その系譜、地理、軍事、政治などすべての面で、この晋国ほど謎が多く興味深い国はない。また、あの孔子は斉の桓公に比べて文公の方を<(おと)>している。筆者はいよいよ不満で、集中して調査した。そして桓公・文公の史伝は、『国語』や『左伝』に勝るものはなく、『史記』にいたっては正にその翻案の参考資料に過ぎないと思った。そこで両者の史伝を『左伝』や『国語』で編成し、次いで信頼できる中国古典中の両者の記録、併せて巷間に散見する記事なども眺めてみた。そして創作的発想でなく、才能の薄い筆者は史伝に忠実なる記録として纏めてみた。太公望呂尚には驚くべき多量の資料や英傑のその功績、桓公には管仲なきあとの人間失格の側面、文公には頑ななまでに誠実な姿を窺いえた。
 ということで、本書は小説的なおもしろさというよりも中国の史伝を解き明かそうというおもしろさがありました。ですから、本書を読んで「おもしろい」と思う人は少ないでしょう。宮城谷昌光さんの『重耳』や『介子推』、『沙中の回廊』などを読んで、重耳に興味を覚えた方であれば本書を読んでみてはいかがでしょうか。
 以下に本書の構成をご紹介します。『重耳』の読者の方であればおおよそ内容は想像がつくのではないでしょうか?

《晋国を生んだ母胎》
 1 晋国の系譜
 2 晋国の地勢
 3 晋国の軍事力
《晋国公室内の混乱》
 4 獻公の粛清と驪戎討伐の凶
 5 驪姫に溺れる獻公と悲運の太子申生
 6 獻公の死と晋国の混迷
 7 恵公時代と晋・秦の確執
《文公重耳の人と覇業》
 8 永年の流浪にあえいだ重耳
 9 文公治世の目覚ましい成果
 10 覇者への階段をのぼる文公
 11 覇者文公と城濮の戦い
 12 文公没後の晋国情勢
 13 文公重耳への追憶

 真説 重耳

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